問題発生時に気を付けていること: 対策の中心地にいる、中心地になる

最近、会社でかなり大きな問題が発生し、業務中はその対応に追われています。その中で、色々気づいたことがあったので、何回かに分けて書いてみます。今回の話は、自身の仕事のスタイルとして、「仕事の中心地にいることを心がけている」ということに改めて気づいた点です。

たいていの仕事は、中心地がある

私がやっている仕事は一人で完結することはできず、社内外問わず、10人前後の人間がかかわることで進んでいます。たいていの仕事は、複数人が関わっているでしょう。仕事で連携する人同士のつながり、下図のような絵で表されることが多いと思います。

この時、仕事を進める上で重要なラインがあり、それが集中する部分が人のつながりでの中心地です。基本的には、赤の部分に情報が集積されるため、大事な情報はここにアクセスする必要があります。新たな情報を追加する時も、赤以外の部分にインプットしては、それがメンバー全体の共通理解となるまでに時間を要するため、適切ではありません。

 

上記は人のつながりですが、物理的な位置も重要です。COVID19以降、リモート勤務が増えました。一方で、face to faceのやり取りの重要性も見直されています。私は考えるリモート勤務の弱点は

  • ハードを扱う業種だと何もできない: 例えばネジを作る業種だと、家でネジを加工したり、評価したりすることは難しい (できたとしても、それを製品として扱うことはできない)
  • 緻密なコミュニケーションが必要な際に、タイムラグや情報共有の遅れが発生する  
  • 細かいニュアンスの伝達が難しい (日本人が得意とする非言語コミュニケーションはリモート環境には不利)

があります。問題が発生した場合、物理的な中心地を作ることも、仕事を推し進めるのに重要です。

Next Step: 中心地にいるのではなく、中心地になろう

上記までは、割りと当たり前な話でした。今回、会社で発生した問題で再認識したのが、「中心地にいるのではなく、中心地になろうとすること」こそが大事という点です。問題が発生した場合、いつもより多くの情報が飛び交い、多くの人間が関わり、時間的にも追われており、ゴチャゴチャな状態になります。(関わりたくないと思う気持ちをグッと堪えて) あなたが、情報の整理し、やるべきことを決め、日程を引けば、かならず中心地になります。そうすると、更に情報が集中することになるので、仕事が進めやすくなります。

私自身も、もっと意識しないと・・・。

「大地の芸術祭@越後妻有」に行ってきた。瀬戸芸との違い

先日、新潟の越後妻有 (エチゴツマリ) で開催されている大地の芸術祭に行ってきました。今回は3日間の旅でした。1日がオフィシャルツアーに参加し、残り2日は車を借りて作品を巡りました。

巡った作品

クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマンの「最後の教室」を最初に訪れました。瀬戸芸 (瀬戸内国際芸術祭) が開かれている豊島には彼の作品「心臓音のアーカイブ」があり、この「最後の教室」にも似た展示がありました。最初からテンションを上げてくれます。

クリスチャン・ボルタンスキーの遺作となってしまった、「森の精」。

ほくほく線美佐島駅でのパノラマティクス/齋藤精一「JIKU #013 HOKUHOKU-LINE」。光の作品だと思っていたら、想像以上に音が大きくてびっくりしました。

栗真由美「ビルズクラウド」。別の作品見る途中にたまたま寄ってみた作品ですが、アタリでした。

アントニー・ゴームリー「もうひとつの特異点」。これも面白い作品でした。

瀬戸芸に比べ、建築をウリにした作品は少なかったですが、これは凄いと思ったのが、「越後妻有里山現代美術館 MonET」。中央に浅いプールがあります。

美術館の作品で、名和晃平「Force」。言葉にすれば、天井からシリコンオイルが落ち続ける作品、ですが、これの面白さは見ないと分からない。

これも美術館内の作品、クワクボリョウタ「Lost#6」。プラレールにライトが備えれ、壁に映る通過場所の影が流れていく。車窓ではなく、影を追う作品。

大地の芸術祭と言えば!の清津峡。マ・ヤンソン/MADアーキテクツ「Tunnel of Light」。フォトジェニックな場所です。

瀬戸芸との違い

振り返ってみると、「暗いなぁ」というのが印象です。瀬戸芸に行ったのが夏で、今回は秋ということもありますが、雪は積もっていないものの、雪国の暗さを感じる展示が多いように感じます。ただ、作品の質は瀬戸芸と遜色ありませんでした。瀬戸芸を楽しめる人は、十分満喫できるでしょう。

作品巡りの観点では、一長一短だと思います。決まったエリアを周るのは、瀬戸芸の方が楽かなと感じます。直島内であればレンタルバイクや自転車などを借りれば、移動はラクチンです。大地の芸術祭は、広範なエリアを自由に巡るには車は必須で、途中狭い山道もあるので、それなりに運転に自信がある人でないと辛いでしょう。一方で、瀬戸芸で大変なのは、当然、島と島と移動です。決まった時間でしか船便は動いていませんし、単純な距離以上の時間を消費します。

また、主要なテーマも異なるように感じました。

自然と風景、一見似ている言葉ですが、その違いは大きいです。「自然」は雪国の厳しさ、峡谷の厳かさを指す一方、「風景」は瀬戸内海の穏やかさ、光の暖かさを表します。

半分廃校巡り

大地の芸術祭に暗さを感じたのは、廃校巡りが多いことも理由の1つです。鑑賞していない作品も含めると、こんなにもあります!

  • 最後の教室→旧東川小学校
  • 絵本と木の実の美術館→真田小学校
  • 赤倉の学堂→旧赤倉小学校
  • 越後妻有清津倉庫美術館清津峡小学校
  • 明後日新聞社文化事業部→旧莇平小学校
  • 奴奈川キャンパス→奴奈川小学校
  • スノーフェンス→旧清水小学校
  • 越後妻有「上郷クローブ座」→上郷中学校
  • 記憶のプール→旧津南小学校大赤沢分校

人口減少・過疎化が進み、どんどん貧しくなる日本を見せつけられたようで、悲しい気持ちになりました。今はまだ小学校が廃校になった作品が主流ですが、今後は中学校→高校が増え、最終的には地方大学になるのでは、と想像しますします。(廃校となった大学を作品にする展示は、見てみたいという気持ちもありますが・・・)。

 

若干暗い気持ちになった、大地の芸術祭の備忘録でした。来年は能登で芸術祭があるそうです。計画立てるぞ!

 

瀬戸内旅行記2022夏 総括編 「アートと建築と風景の融合が素晴らしい」

瀬戸芸に行った旅行記、今回が総括編になります。結論は、行って大正解でした。

素晴らしいところ

アート×建築で恒久展示をすることの価値

個人的にはこれが最も感動しました。直島の地中美術館は、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3名の作品しかなく、それが恒久的に展示されています。これが何を意味するかというと、彼らの芸術作品をインスタレーションとして建築と組み合わせることができるのです。ここで出てくるのが安藤忠雄です。この4人のコラボレーションによって、地中美術館というアート作品が出来上がるのです。豊島美術館も同様です。恒久展示だからこそ、アート 内藤礼×建築 西沢立衛 というコラボレーションができます。

日本全国美術館は多くありますが、展示作品全てが恒久展示であるというのは、私にとっては初めてで、だからこそ思いきった建築、そして作品ができると感じました。

アート×美しい風景

もう1つは、何と言っても瀬戸内の風景とのコラボレーションです。瀬戸芸の作品には青空展示が多く、穏やかな瀬戸内海をバックにしたそれは非常に印象的でした。空間を作るという現代アートだからこそできる価値提供でしょう。

もっと良くなるところ

予約の改善: 一元化とサービス拡充

準備編でも記載しましたが、予約が面倒過ぎます。瀬戸芸という1つのイベントで価値を提供するのであれば、その予約の入口は一元化して欲しいです。各施設の予約要否・スケジュールの可視化などができると、もっと良くなります。

店のオペレーション

直島で電動バイクをレンタルした際のくだりで記載しましたが、予約者とそれ以外を分けて扱わないのは、大きな問題です。また、観光客側にも情報提供が必要だと思います。正直、夏休みシーズンに予約なしでレンタルバイクをしようとする客は門前払いでも良いと思います。ハードルを上げることにより、より質の高いサービスを提供し、価格転嫁し、利益を上げることにつながると思います。

観光客にお金を使ってもらう仕組み

これはちきりんさんや木下斉さんがVoicyで述べられていましたが、観光客がお金を落とす仕組みが少なすぎるのは、確かにその通りだと思いました。観光客を日帰りで帰してしまう点もそうですが、日帰り客に対しても、船や食事、作品観覧への費用をもっと上げても良いと思います。私自身、航空機代と宿泊費は別として、それ以外の費用が2倍になっても旅行を断念することはなかったでしょう。それぐらいの価値を提供をしているのだから、胸を張ってお金を受け取るべきだと思います。特にコロナが明けて、海外からの観光客を受け入れる時までには価格を上げておくべきです。

2022/8/1 #0346 ちきりんさんと地方都市から生放送!【第一部】ここが変だよ地方観光!(第二部はちきりんさんチャンネル) | 木下斉 一般社団法人AIA代表理事/内閣府地域活性化伝道師「木下斉の今日はズバリいいますよ!」/ Voicy - 音声プラットフォーム

2022/8/1 #636 第二部 木下斉さんと地方都市から生放送 | ちきりん「Voice of ちきりん」/ Voicy - 音声プラットフォーム

難しいとは思うのですが、撮影権というのを売れないかなとも思いました。地中美術館豊島美術館は館内撮影禁止です。これを開館時間前もしくは後の30分を撮影OKにしてその時間を1〜数万円で売れないかなと思いました。私なら、1万円であれば購入しても良いと思います。例えば10組の人を入れるとして、1万円×10組で10万円。結構大きい稼ぎな気がします。

面白いと思ったところ

直島の飲食店の方が値上げに抵抗がない?

上の話につながりますが、宇野港や高松よりも、直島・豊島の方が値上げに抵抗がないのでは?と感じました。それは、瀬戸芸のデジタルパスポートアプリを見た時の感想です。このアプリでは、展示作品・イベント・クーポン可能の場所をマップ上に表示できます。そのスクリーンショットが下記で、左が香川 高松港、右が直島の宮浦港です。クーポンを出している店の数が圧倒的に違います。高松港周辺では10以上の店がクーポンを出しているのに対し、宮浦港ではゼロ。これは、宇野港と豊島の関係も同じです。

高松の店にとっては、競争=安売り合戦なのでしょう。一方で、直島の人たちはそもそも競争という概念が無かったのではないか、と考えています。だからこそ、クーポンを配って集客するという必要も感じない。ただし、今後は競争も増えてくると思います。その時には、安売りするのではなく、価値を上げて、価格を上げる取り組みを積極的に進めてほしいと思います。

 

ということで、今回の旅の話はここまでです。冒頭の通り、大変満足できた旅でした。10月は大地の芸術祭に行く予定です。

瀬戸内旅行記2022夏 高松編 「香川の建築の歴史を知る」

豊島 (てしま) から船に乗り高松港に到着しました。展示作品は少ないですが、高松港も瀬戸芸の会場の1つです。

朝食を取っていなかったので、何はともあれ、うどんを食べます。ウマイ。

うどん屋さんへ向かう途中、香川県庁の前を通りました。「県庁にしては、かなり立派な建物だなぁ」思いました。これが後につながります。

高松市美術館では鴻池朋子展「みる誕生」が開かれていました。

館内に紐が渡っており、順路に紐が続いている構成。

童画の挿絵。

インスタレーションもありました。

 

同時開催されていたのが「船の体育館展」です。これが香川県の近現代建築を知るうえで非常に参考になりました。

www3.nhk.or.jp

高松は第二次世界大戦で空襲を受けました。戦争が終わり、高度経済成長期入ると、香川の近代建築の時代が始まります。

1958年: 香川県庁舎東館

先述の県庁で、日本の建築家として早くから海外で活躍した丹下健三の設計です。調べてみると、香川県出身の洋画家 猪熊源一郎の紹介から発展したそうです。

1964年: 香川県立体育館

今回の展示会で取り上げられている「船の体育館」です。同じく丹下健三の設計。今見ても先進的な建築です。

 

高度経済成長期が終わり、日本は安定成長期に入ります。

1970年: 直島町立小学校

先日のブログで紹介した直島町立小学校は、直島がアートの島と有名になる前からあります。設計は石井和紘で、この人が初期の直島建築のキーパーソンのようです。

1979年: 直島町立中学校

設計は、同じく石井和紘です。

1986年 香川県営住宅一宮団地

丹下健三設計。丹下建築では唯一の集合住宅だそうです。写真がないのでNHKのリンクを張っておきます。

香川の名建築 後編 -一宮団地と四国村ギャラリー | 瀬戸内×アート | NHK高松放送局

 

バブル期には瀬戸大橋が開通します。そして1990年に入って直島アートプロジェクトが始まります。

1992年: ベネッセハウスミュージアム

安藤忠雄が設計です。

1998年: 南寺

家プロジェクトの1つです。設計は安藤忠雄、中のアート作品はジェームズ・タレルです。

2003年: 地中美術館

同じく安藤忠雄 設計。

2006年: 海の駅なおしま

設計はSANAA金沢21世紀美術館を設計した二人組です。

2010年: 地中美術館

内藤礼西沢立衛の二人。この年に第1回目の瀬戸芸が開催されました。

2013年: 豊島横尾館

永山裕子の設計です。

2015年: 直島パヴィリオン

藤本壮介の設計。

2021年: ヴァレーギャラリー

安藤忠雄の設計。


香川の建築と言えば、直島そして安藤忠雄、と捉えがちでしたが、古くは丹下健三という大物がいて、直島には石井和紘という土台があったということを知りました。

 

次回は、総括編です。

 

瀬戸内旅行気2022夏 豊島編 「自然とアートの融合」

直島の次は、豊島 (てしま) に向かいます。移動はもちろん船ですが、宇野港→直島時と比較してかなり小型です。40人ほど乗れる船内は、ほぼ満席でした。30分ほど船に揺られて豊島に移動します。豊島でも電動バイクをレンタルして移動しました。直島と比べアップダウンが多いので、絶対に自転車よりバイクの方が快適です。

豊島は直島よりも見るスポットが少ないですが、島全体にアートスポットがあります。船が到着してバイクをレンタルしたのが、家浦地区です。そこを発着地点として、半時計周りに巡りました。

https://teshima-navi.jp/wp_teshima/wp-content/uploads/2022/04/bfd3d7f3566d3fdbe5d45c1a2f1d01b7.pdf から転載

「ヘザー・B・スワン+ノンダ・カサリティス」は海を目の前にした、奇妙な形をしたベンチ。ここに座ってボーっと海を眺めるだけでも、映える気がします。

走行中にオリーブの栽培風景もありました。オリーブと言えば小豆島ですが、豊島にもあるようです。

それにしても、瀬戸内の風景は素晴らしい!・・・、と思いながら進んでいると、何やら剣呑な看板がありました。

バイクを降りて、下を覗き込むと、確かにありました。本音を言うと、上の看板が無ければ、気づくことなく素通りしていたでしょう。確かに、景観もエネルギーもどちらも大事ですが、良い落としどころを見つけてくれることを望みます。

豊島と言えば豊島美術館ですが、その前の坂道が絶景です。坂道の先には、瀬戸内の青い空と海が広がります。

別のアングルからは、棚田も見えます。

豊島美術館の敷地に入っても絶景が広がります。メインの建物に入る前に、スロープを進んで敷地を一周します。

先ほどの坂道も、別の角度から見ると、また印象が違います。

ちょっとした林のすき間から、瀬戸内の青い海が望めます。

そしてメインの建物。中は写真撮影禁止だったのですが、非常に面白い体験ができました。ジェームズ・タレルのオープンスカイと同様、天井に開口部があり、そこから日光が差し込みます。そして床からは、少量の水が小さな穴から湧き出てきて、何とも不思議な空間でした。広い空間の中で、来館者は座ったり、横になったり (事前に靴を脱ぐルールです) していました。みんな影の場所を陣取っていましたが、私は一人日が差すところを狙ってブラブラしていました。この日も暑い一日でしたが、この空間は涼しかったです。

他に印象的だったのは、「心臓の音アーカイブ」です。分かりやすい写真撮れなかったのですが、訪れた人の心音を録音し残すプロジェクトです。中に鏡張りの細長く暗い部屋があり、これまでにアーカイブされた心音が大きめの音量で再生されます。部屋の中央には、電灯があり、心音と同期して光ります。人によって、心音の違いが分かるのと、その表現の仕方が独特で面白かったです。私の後に入った男女のカップルは、女性の方が「怖い」と言って、すぐに部屋から出られていました。

せっかくなので、私も追加料金払って、心音をアーカイブしてきました。まぁ、アーカイブ後の心音を聞いても、特に感慨はありませんでしたが、記念としては面白い体験でした。ちなみに、アーカイブ後にCDを貰ったのですが、帰宅後すぐに捨てちゃいました。記念品に思いをはせる性格ではなく、体験にお金を払うタイプなので、ネットで聞けるようにしてCDは遠慮できるようにして欲しいです。

お昼は海のレストランで食事です。バイクなので、残念ながらアルコールは飲めません。何と言っても眺めが素晴らしい。私は冷房の効いた屋内の席に陣取りましたが、外の席だとこんな眺めを見ながら、食事ができます。

汗を大量にかいたので、塩分補給します。

炭水化物も接種します。

ランチ後も豊島観光を続けます。「針工場」という場所。個人的には作品よりも、針工場そのものに興味を惹かれました。この場所は昔、針工場だったらしいです。針の工場。そりゃ、そんなのもあるよ、と言われそうなのですが、そういう工場もあるのだな、と知りました。

家浦地区に戻って、豊島横尾館に行きました。

入口からして、センセーショナルです。ここには、鏡張りのトイレがあります (使ってません)。

豊島にも一泊したのですが、素泊まりだったので、アルコールの手配場所に困りました。その時、教えてもらったのが、豊島横尾館の向かいにある、こちらの商店。たくさんの種類のお菓子とお酒 (ビールやチューハイなど) を置いていて助かりました。

バイクを返却し宿にチェックイン後、堤防で一杯。サイコーです。

堤防から眺める景色は、ノスタルジックです。撮っていて、我ながら良い絵だなぁ、と思ってしまいます。

宿に戻り、ぐっすり寝て、朝一の船で豊島を後にします。日帰りでも楽しめる大きさの島ですが、精神的に余裕が持てたので、宿を撮って正解でした。

 

翌朝、高松へ移動します。

瀬戸内旅行記2022夏 直島編 「現代アートにあふれた島」

2時間弱の宇野港散策を終え、いよいよ直島入りです。夏休み中なので乗客は多かったです。ちなみに大人片道300円。安過ぎです。地元民は安くして、観光客向けには1,000円ぐらい取れば良いのに。

1日目: 宮ノ浦エリア & 本村エリア、と少しベネッセハウス周辺

直島宮浦港に到着すると、草間彌生さんの「赤かぼちゃ」がお出迎え。直島と言えばコレ!、ぐらい有名です。私と同様に写真を撮る人が大勢いて、インパクトある作品はやはり集客力が強いと実感。

宮浦港のフェリーターミナルも作品の1つだそうです。海の駅「なおしま」。風が通りやすく解放感があり、影の部分も広いので、炎天下よりかなり涼しかったです。

今回の直島は、ベネッセハウスに2泊します。1日目に直島全体を回り、2日目にベネッセハウス周辺を散策します。ターミナルに来たベネッセハウスのバスに、大きい荷物を預け、さっそく直島観光開始です。

直島全体を回るには移動手段が必要で、今回選択したのは電動バイクです。この選択は大正解だったのですが、それを入手するまでが時間かかりました。私は事前にバイクを予約していきましたが、予約なしで直島を訪れ、その場でバイクや自転車を借りようとする人もいました。予約をしたにもかかわらず、その人たちと同じ列に並ぶことになり、かなり待たされました。事前予約者を優先するという当たり前のことができていないのは、非常に残念でした。この辺りのオペレーション改善は強く希望します。

さて、ようやく入手した今回の相棒はこちら、YAMAHAのEC-03です。自転車ではなくこちらを選択して大正解でした。当日はかなりの猛暑で35℃を超えており、炎天下で自転車を漕ぐなど考えられません。風を切りながら走るとなかなか快適で、スピードはそもそも出せないので、特に安全性に不安もありませんでした。レンタル代も2,500円程度なので、かなりオススメです。

直島にはざっくり、ざっくり3つのエリアがあります。フェリーが到着した宮浦港がある①宮ノ浦エリア、家プロジェクトの作品が点在する②本村エリア、地中美術館がある③ベネッセハウス周辺。観光1日目は、①宮ノ浦エリア & ②本村エリアをサクッと回ります。

https://www.benesse-artsite.jp/access/naoshima/ から転載。

宮ノ浦エリアで最もインパクトがあったのは先述の「赤かぼちゃ」ですが、印象深かったのは「宮浦ギャラリー六区|瀬戸内「  」資料館」です。こじんまりした建物の窓ガラスにライターが飾られており、非常に美しいです。

内側から見た写真。

さて、この施設には資料館も併設されています。そこは写真撮影禁止だったのですが、直島を含めた瀬戸内の歴史や写真が狭いスペースに展示されていました。そこで驚いたのが、直島の昔の写真。白い土が完全に露出しており、まさにハゲ山でした。

下記の写真は、直島上陸前に宇野港から撮影した写真です。右手の島が直島です。事前準備で読んだ本に、「直島の北側はかつてハゲ山だったが改善された」という趣旨の記載がありました。いざ瀬戸内に来ると、今でも十分ハゲ山だと思いましたが、昔はもっとひどい状態だったということを知りました。

直島の北側には精錬所があり、その排出物により草木が枯れてしまったそうです。当時の写真を撮ったのは、その精錬所に勤める人たち。今でこそ、アートの島として賑わっていますが、当時はその精錬所が唯一産業だったのでしょう。島を存続させるためには産業が必要だが、島の草木は枯れてしまう。その矛盾を抱えつつ生きてきたのでしょう。本当のハゲ山だったころの写真は、直島の過去を知る上で重要な資料なので、直島を訪れた際はぜひ、立ち寄ることをオススメします。

 

本村エリアは、古民家をアートとして再建する「家プロジェクト」が点在するエリアです。そのうち「角屋」は、浅いプールを部屋に作り、水没させた7セグメントLEDの数字が切り替わっていきます。

入口とは反対側から撮った写真。数字が変わるだけなのに飽きないです。

本村エリアの中心地から少し離れたところにある「石橋」。アートな部分もありますが、庭ありのザ・古民家が保全されており、猛暑で火照った体を落ち着かせるのに、一役買ってくれました。

直島発展のキーパーソンの一人である建築家 安藤忠雄さんの「ANDO MUSEUM」もあります。地中美術館やベネッセハウスの設計途中のラフ画や建築途中の写真が展示されており、実際に訪れる前にワクワクさせてくれます。大阪にある「光の教会」にも行ってみたいです。

家プロジェクトの「南寺」にも行きたかったのですが、何と混雑時は朝10時からの整理券を入手しないといけないとのこと。私が訪れたのは午後で、既に全て配布済み・・・。同じ家プロジェクトの「ぎんざ」はWeb予約なのだから、「南寺」も予約できるようにして下さい!

 

バイク移動なので、アート作品が集中するエリア以外にも足を延ばすことができました。直島は学校もアートです。まずは直島中学校。奥の方は、最近のホテルのような出で立ちです。

こちらは隣接する直島小学校。アニメに出てくる基地の印象を持ちました。子供時代にこんな素晴らしい建築に毎日通っていると、都会の画一的な建築の学校に行ってみたら、どう感じるのでしょうか?

プラントが並ぶ北側にも行きました。アートではないけどカッコイイ。工業×アートも良いですね。工場の跡地が、新たな現代アートの場になる未来が見えました。

最後に宮浦港に戻って、レンタルバイクを返却。ベネッセハウスのバスを待っていたところ、宇野港に戻るフェリーに乗ろうとする人の長蛇の列がありました。ざっと見た限り200人はいたでしょう。荷物の量を見る限り、日帰りの人がほとんど。宇野港でも思いましたが、観光客にお金を落として貰わなかったら、地域は活性化しません。この人たちに宿泊してもらう仕組み作りが必要です。

ということで、私はお金を落とすためにベネッセハウスへ。小さめの部屋ですが、景観と少し歩けばアートに触れられる環境は、他のホテルでは味わえません。

 

ベネッセハウスでの小休憩もそこそこに、地中美術館へ向かいます。目的は、ナイトプログラムへの参加です。地中美術館の展示の1つである、ジェームズ・タレルの「オープン・スカイ」を日没の45分間楽しむというものです。写真は撮れなかったのですが、これは非常に面白い体験でした。入館料プラス1,000円での体験としては格安です。

benesse-artsite.jp

「オープン・スカイ」は、部屋の天井に四角い穴があけられ、空を直接見ることのできる作品です。鑑賞者は部屋の壁伝いに設置されているベンチに腰掛け、空の移ろいを眺めることができます。私が最初に思ったのは、「天井に見えるあの空は本物なの?」でした。時々、枯葉が落ちてくるので、単なる映像ではないということは分かるのですですが、どうも本物の空とは思えませんでした。結局、私の中では、本物の空だと結論づけたのですが、疑ってしまったのは、①部屋に設置された壁を照らすライトと、②空の一部しか切り取られないと雲の動きが把握できない、ことが理由でした。

①白壁と天井を照らすライトは、時間とともに色が少しずつ変わります。空と天井のコントラストが刻一刻と変わるため、徐々に暗くなっているはずなのに、空が明るくなったり色が変わったりしていると誤認してしまいます。

②広い空を見て、雲の全体像が把握できると、雲がどの方向に流れているかを認識できます。しかし、切り取られた枠の中でしか雲を見ることができないと、雲がどちらの方向に動いているかすら怪しくなります。

①②が混ざることで、おかしな変化をする空と雲が見え、本物かを疑ってしまうことにつながりました。天井の一部を開き、壁をライトで照らすという非常に簡単な仕組みにもかかわらず、人の認識をズラす仕組みは非常に面白かったです。

ナイトプログラムを堪能した後は、ホテルに戻り夕食を食べて就寝しました。宇野港 & 直島を盛りだくさんで堪能した1日目は、ようやくここで終了です。

2日目: ベネッセハウス周辺

2日目はベネッセハウス周辺を散策する軽めの旅程です。まずは、前日ナイトプログラムで訪れた地中美術館を訪れます。ここの面白いところは、チケットセンターと美術館が徒歩数分の距離で離れている点です。

その理由は、美術館に向かう途中の道にあります。

左側の歩道を進むと、睡蓮のある池が!これから見ることになる、モネの「睡蓮」を具現化しているのです。こだわりが凄いです。

地中美術館の入口です。入口だけで、安藤忠雄さんの建築であることがビシビシ伝わってきます。

この階段も印象的。

中の展示も物凄く印象的だったのですが、残念ながら写真撮影禁止でした。地中美術館には、たった3人の作品しかありません (安藤忠雄さんを含めると4人)。

他の2つが現代アートに対し、モネは印象派の巨匠。これまで島で見てきた作品とはやはり時代の違いを感じます。

  • ウォルター・デ・マリア「タイム/タイムレス/ノー・タイム」

ザ・スピリチュアルという展示でした。これから宗教的な儀式が始まるかと思うくらい、荘厳な空間でした。

  • ジェームズ・タレル「アフラム、ペール・ブルー」「オープン・フィールド」「オープン・スカイ」

「オープン・フィールド」も違った意味でスピリチュアルな作品でした。デ・マリアの作品が荘厳さを表し、「オープン・フィールド」は幻惑さを表現していました。作品のある部屋に案内された訪問者は、薄暗い部屋の中にある数段の階段を昇り、実体のつかめない空間に誘われます。

この体験を言葉にするのは難しすぎるので、是非足を運ぶことをオススメします。

benesse-artsite.jp

その後もベネッセハウス周辺を散策し、色々な作品を見て回りました。隠れたところにあるウォルター・デ・マリアの「見えて/見えず 知って/知れず」

海沿いにベンチがあり、小休止もできます。

ニキ・ド・サンファール「腰掛」

ベネッセハウスには昼過ぎに一度戻り、昨日までで疲れた体を、冷房の効いた部屋で休ませます。そして、夕食前にベネッセハウスミュージアムに移動します。

瀬戸内の夕日もきれいです。下の方の黒い部分に杉本博司「タイム・エクスポーズド」が展示されています。個人的に、杉本博司さんと言えば、ロックバンドU2の「No Line On The Horizon」のアルバムジャケットを思い出します。

ブルース・ナウマン「100生きて死ね」は全て文字が光っていますが、実際の展示は1つずつ点滅し、5分中10秒程だけ全ての文字が光ります。

個人的に印象的だったのは下記の言葉。

その後、夕食を食べ、早々に就寝しました。

3日目: 豊島 (てしま) へ移動

直島最終日は、朝食食べたらすぐに移動です。パンが美味しかったです。

チェックアウト後に、ベネッセハウスのバスで宮浦港に向かいます。

 

非常に長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。次は豊島 (てしま) 編です。

瀬戸内旅行記2022夏: 宇野港編 「瀬戸芸の本州側入口」

瀬戸内旅行、最初の目的地は直島への船が出る宇野港です。岡山空港からバスで岡山駅岡山駅から電車に乗り、途中の茶屋町駅で乗り換えして宇野駅に向かいます。茶屋町駅始発の電車でホッとする出来事か置きました。向きを変えられる座席でしたが、いざ発車すると、全乗客の着席方向とは逆に電車が進みだし、間違って照れくさいような笑いに車内全体が包まれました。

岡山空港から2時間ほどで宇野駅に到着です。二次交通はあまりよくないです。

乗船予定の直島行フェリーの出発まで2時間弱あるので、宇野港周辺の瀬戸芸作品を見て回りました。

とはいえ、朝が早かったので、とりあえずは腹ごしらえ。宇野駅から徒歩10分程度の#8 WIRE (下記写真の右手ビル1階) というハンバーガーショップに行きました。古びたビルを改装した施設の1階にあり、テイクアウトでも常時お客さんがいました。ビルには、喫茶店や展示スペースなどもあり、新たな商業施設を建てずとも、既存のモノでやりくりするのは最近のトレンドに則していると感じました。これは瀬戸芸の影響でしょうか?

食べたハンバーガーはこちら。パテだけじゃなく、バンズがウマイ。

食後は宇野港周辺をブラブラしました。見た目は古びた個人診療所ですが、これは瀬戸芸の作品「実話に基づく」です。

診療所を改装した作品で、棚には医薬品のビンや紙箱が並んでいます。床のテレビには、別の建物を油圧ショベルで取り壊す映像が流れています。作品として残った旧診療所と、条件が少し異なることで回避できた未来 (取り壊し) を同じ空間に共存させています。

外壁に内科・小児科とありましたが、この椅子は何となく歯科を連想させました。歯を削られて悶えている私自身が浮かびました。座りたくない・・・。

 

動きものの展示には、心惹かれる魅力があります。「赤い家は通信を求む」の作品の1つが、ある地球儀にモータが搭載されていて、ギアのように触れ合っている他の地球儀も同時に回転するもの。見ていてて楽しい作品でした。

他にもぐるぐる回るウキ。

 

宇野港周辺で最も有名なのは「宇野のチヌ」だと思います。色の違うゴミを重ね合わせて、レインボーを表現しています。

 

短時間の宇野港散策でしたが、フェリーの待ち時間としては充実した時間の使い方ができました。逆に言うと数時間は過ごせますが、宇野港で宿泊するほどの魅力は持ち合わせていません。市内や空港からのアクセスは不便で、わざわざここに来る観光客は、ほとんど直島・豊島が目当てでしょう。宇野港周辺で、お金を落としてもらう施策が必要だと感じました。

 

次回は直島編です。