自動販売機:幼少期に、唯一インフレを感じた場所

デフレの国、日本にもインフレの波が訪れています。とはいえ、国内で分かりやすく価格が上がっているのは電気・ガスぐらいのもので、食料品は企業努力?によって、なかなか値上がりしません。需要が活性化する高付加価値の製品・サービスを供給しつつ、価格を上げ、収益を上げ、給料を上げるサイクルを回す感覚を、どの会社も身に着けてほしいものです。

今の世代は、デフレしか知らない、とよく言われます。私自身も、モノの値段が上がる体験はほとんどしたことがありません。その中で、幼少期に唯一インフレを感じたのが自動販売機でした。私が記憶している350ml缶飲料の最安値は90円だった思います。その後、割とすぐに100円に上がり、110円、120円と10円ずつ上がっていきました。今は120, 130円辺りで、長くその値段が維持されています。

自動販売機が、幼少期に唯一インフレを感じた場所である理由は、自分でお金を握りしめ、自分で支払い、自分で品物を受け取る、所謂お使いをするのが、自動販売機ぐらいだったことです。私が住んでいた町は、近くに商店や駄菓子屋などはなく、買い物と言えば、必ず車に乗っていくものでした。そうすると、スーパーでお菓子は選べても、その支払いは親がやっていました。そのため、商品の価格を感じることはありません。一方で、自動販売機は家の近くにあり、100円玉を握りしめてジュースを買いに行くことは何度もありました。そして、途中から10円玉が加わり、さらには財布ごと持っていくようになり、当時の私は「ジュースって、値段が上がっていくものなんだ」と肌で感じることができました。

 

振り返ってみると、ジュースの値段が上がったのは、インフレというより、消費税が上乗せされた面が大きいです。とはいえ、その中身が変わらなくとも、表示価格が上昇していくとい体験は、私にとって貴重な出来事でした。あの体験がなかったら、今のインフレをもっと恐れていたでしょう。